ニューヨーク大学主催ウェビナーに参加しました!

日本時間の真夜中、午前1時から始まったこのセッション。

テーマは「AIは人間のリーダーシップをどう強化するか(How AI is Empowering a New Era of Human Leadership)」。

モデレーターは、ニューヨーク大学で人的資本管理プログラムの学部長を務めるAnna Tavis教授

スピーカーは、AIとコーチングに関する研究の世界的リーダーであるDr.Nicky Terblanche教授と、世界的なエグゼクティブコーチング企業aiir consultingを率いるDr. Jonathan Kirschner代表取締役という超豪華版。


このウェビナーでDr.Kirschnerさんが紹介くださったのが、「AI時代のリーダーに求められる7つのスキル」。


この7つのスキルのうち最初の2つがもっとも重要であるとDr.Kirschnerさんは強調していました。

レジリエンス(Resilience)

困難な時期にも冷静さを保ち、挫折から立ち直る力。

変化のスピードが指数関数的に加速するAI時代において、「レジリエンス(回復力)」は、効果的なリーダーシップの礎となります。変化は不可欠である一方で、リーダーにもチームにも大きな負担をもたらします。あまりにも急激で過度な変化は、燃え尽きや反発、生産性の低下を引き起こす可能性があります。

たとえば、これまで手作業で行われていたプロセスが突然AIによって自動化され、職場に不安が広がるような状況を想像してみてください。リーダーは、自らが変化に適応するだけでなく、チームにとっての安定的な支えとなる存在であることが求められます。

そうしたリーダーは、変化を建設的に受け止める姿勢をチームに浸透させ、移行期においてもメンバーが関与し、支えられていると感じられるように導くことができます。そして研究によれば、そのようなリーダーは、より高いレベルのイノベーションをチームにもたらすことができるとも示されています。

好奇心(Curiosity)

新しい情報・アイデア・経験を積極的に認識し、追い求めようとする傾向。

AI主導の世界において、リーダーにとって「好奇心」は不可欠です。AIの持つ可能性を幅広く探求し、変革的な機会を見出す力を与えてくれるからです。好奇心を欠いたリーダーは、AIを表面的な作業にとどめてしまい、イノベーションや競争優位性を高める真の可能性を見逃してしまうおそれがあります。

たとえば、あるリーダーが日々の業務でルーティン作業を自動化するために生成AIを試すとします。多くのリーダーは、その時間短縮効果に満足するでしょう。しかし、「好奇心旺盛なリーダー」は、そこで止まらず、「他に何ができるのか?」と問い続けながら、常に新たな情報を吸収し、さらなる活用の可能性を模索し続けるのです。

同様に重要なのが、部下やチームメンバーに「好奇心」を促すことです。たとえば、Googleでは従業員の勤務時間の20%を、自分の興味に基づいたプロジェクトに充てることが奨励されています。たとえそのプロジェクトが直接の業務に関係していなくても、このような取り組みが数々の画期的なイノベーションを生み出してきました。

リーダーはこの姿勢から学び、質問を歓迎し、試行錯誤を安全に行える環境を整え、たとえすぐに成功しないアイデアであっても、その挑戦を称賛することで、組織に好奇心の文化を育むことができます。

好奇心を自ら実践し、周囲にも広げていくことで、リーダー自身の理解が深まるだけでなく、チーム全体が恐れずに革新へと踏み出す、探索と発見の文化が育まれていくのです。

戦略的思考(Strategic Thinking)

組織の現状と進むべき方向について全体像を理解し、そこに到達するための計画を立案する。

歴史上、AIほど話題を呼んだイノベーションはほとんどない。その変革の可能性はあらゆる産業に及び、効率性、革新性、競争優位性においてかつてない可能性を提供している。

しかし、この膨大な可能性には、情報の洪水や多くのユースケースが伴っており、AIによる魅力的な新機能を追い求めるあまり、組織の本来の目的やビジョンと一致しない方向に進んでしまうリスクもある。

リーダーは、「ノイズ」に惑わされず「シグナル」を見極める力、つまりAIアプリケーションを批判的に評価し、本当に価値を生むものを見抜く力を養わなければなりません。多くのリーダーが、AIの流行や最先端のイメージに惹かれて導入を決めた結果、実際にはビジネス上の意味ある成果をほとんど得られなかった、という事態に直面することになります。

一方で、戦略的なリーダーは、自らの長期的なビジネス目標に合致するAI投資を優先し、テクノロジーを自身のビジョンを実現するための手段として活用し、それに振り回されることはありません。

このレベルの見極めには、組織の戦略的優先事項と進化するAIの状況の両方を深く理解する必要がある。

問題解決力(Problem Solving)

多様なデータソースを統合し、因果関係を分析し、批判的思考を通じて正確な評価を行い、効果的な解決策を実行する力——これこそが問題解決能力であり、AI導入において避けられない課題に対処するために不可欠です。

たとえば、膨大かつ分散したデータソースをつなぎ合わせたり、望ましい結果を得るために最適なプロンプトを設計したりすることなどが挙げられます。

前述の通り、AIを効果的に導入するには、人間の判断力が欠かせません。リーダーは、AIの出力結果を広い文脈や自動化システムの限界を踏まえたうえで、批判的に評価する必要があります。

そうすることで、AIが意思決定を代替するのではなく、あくまでも人間の経験にもとづいた複雑な理解を補完・強化するツールとして活用されるようになります。

ビジョンの設定(Setting Vision)

明確で魅力的な未来像を描き、それを継続的に伝え続けること──通常、それは組織の成長や変革と結びついています。

人間は本能的に変化を拒むようにできています。実際、不確実性や曖昧さに直面したときの感情的な初期反応は「恐れ」であり、それが変革を成功させるために必要なマインドセット、条件、環境づくりを難しくしています。

こうした不確実な時には、人々はリーダーの言動に注目します。そして、まさにこうした瞬間において、明確で説得力のあるビジョンを伝える力が「恐れ」を乗り越えさせる鍵となるのです。

たとえば、AI導入を進めるリーダーが、「AIによって反復的な業務が削減され、社員はより戦略的で価値ある仕事に集中できるようになる」というロードマップを提示するかもしれません。このとき、AIを“人の代替”としてではなく、“人の能力を増幅する協力者”として位置づけるのです。

さらに、イノベーションのサイクル加速や顧客体験の向上といった具体的なメリットを示すことで、社員に期待と目的意識を持たせ、組織全体に前向きなエネルギーを生み出すことができます。

逆に言えば、明確で魅力的なビジョンがなければ、チームは変化に抵抗し、進展が停滞したり、組織目標の達成が妨げられたりする恐れがあります。

意思決定の質(Decision Quality)

データ、経験、そして直感のバランスをとりながら、的確な判断を下す力。

意思決定というリーダーシップの領域の中で、好奇心や問題解決と並んで極めて重要なのが「意思決定の質(Decision Quality)」です。この文脈において意思決定の質とは、AIが生成する豊富なデータを人間の判断力と直感と統合し、情報に基づいた意思決定を行う能力を指します。

AIは非常に優れた分析力とインサイトを提供しますが、その出力がどれほど効果的かは、それを解釈し活用するリーダー次第です。AIに基づく意思決定であっても、組織全体の文脈の中で評価される必要があります。また、その背後にあるデータやモデルの限界にも注意を払わなければなりません。

リーダーはAIの提案を鵜呑みにするのではなく、次のような問いを自らに投げかけながら批判的に評価すべきです:

これは我々の全体戦略と整合しているか?

AIが見落としている可能性のある要因はないか?

潜在的なリスクをどうすれば回避できるか?

このような視点を持つことで、データに基づきながらも現実的な状況や戦略的な見通しを踏まえた意思決定が可能になるのです。

コミュニケーション(Communication)

言葉と言葉以外の手段を通じて、自分の考え、感情、アイデア、期待を明確に伝える力。

AIの導入という複雑な課題に取り組むリーダーにとって、コミュニケーションは不可欠です。期待の明確化、信頼の構築、人間のチームやAIシステムとの足並みの調整など、すべてにおいて重要な役割を果たします。

効果的なコミュニケーションは、まず人間同士のやり取りから始まります。リーダーは、AIを「どのように使うのか」「なぜ導入するのか」「どんな成果を期待しているのか」を明確に説明しなければなりません。AI導入の「理由(Why)」を率直に語り、対話を重ねることで、リーダーは信頼を築き、AIを活用した変革への前向きな姿勢を組織内に育てることができます。

同時に、リーダーはAIシステムそのものとの効果的なコミュニケーションも求められます。AIは人間ではありませんが、その性能は与えられる指示の明確さと正確さに大きく依存しています。入力が不明確であったり、目的があいまいであれば、期待外れな、場合によっては有害な結果が生まれる可能性があります。

たとえば、顧客対応にAIチャットボットを導入する企業を考えてみましょう。返答のトーンやエスカレーションの基準、複雑な問い合わせへの対応方針など、チャットボットの応答に関するパラメータが曖昧であれば、適切でない、または一貫性のない返答がなされ、顧客体験を損なってしまう恐れがあります。リーダーは、チームへの指示と同じくらい、AIに対しても明確で整合性のある指示を出す必要があるのです。

最後に、AIリーダーシップにおける優れたコミュニケーションとは、透明性の維持を意味します。透明性のある対話は、従業員に意思決定プロセスへの参加意識を与え、リーダーや導入されるAIツールへの信頼を高める効果を持っています。


史上最速で進化を続けるAI。

この時代に自分はAIとどう向き合うのか、ぜひ考えてみましょう!

Global Leadership Education Center, Inc.